そういえばキスの日だ!と思って突貫ほぼワンライで書きました。
タイトル決めてない&短い&勢いで書いたのでとりあえずブログ記事に投下します。タイトル決めたら小説ページに移動するかも。
「見事なものだね」
宿のベッドに腰掛け、本を読んでいたサイラスはいつの間にかこちらを見て感嘆していた。
テリオンの方は武器や開錠具の手入れをし、それから爪をやすり、腕の包帯を巻き直していた。学者先生はどれのことを指して見事と言ったのか。
「何のことだ」
「その腕の包帯の巻き方だよ。キミは両手どちらも利き手のように使うが、口も同じくらい器用に扱うのだなと、改めて思ってね」
どうやら包帯のことだったらしい。足の包帯は両手で巻けるが、腕はそうもいかない。だから布端を噛み、引っ張りながら巻いていた。毎日巻き直すものであるから、その動作も慣れたものだ。
寝る前に巻く必要はないのだが、つい最近まで手首が擦れる腕輪があったせいで巻いているのが常になっていた。
サイラスだって横で何度も見ているはずだ。それに。
「何を今更。それはあんたが一番知ってるだろう?」
「私が? それはどういう…………んむっ……!」
首を傾げるサイラスに近づき、おしゃべりな口を塞いだ。唇を舌で割り開き、歯列をなぞる。シーツを掴んでいた手を撫で、指先までも絡め取る。
「んっ、……ふっ」
唐突な口づけに驚いていたサイラスも徐々に息継ぎに慣れ、舌を絡ませてくる。舌先同士を突き合い、吸い合う。それをたっぷり繰り返して唇を離すと、つうと銀糸が伸びた。
切れて口端についたそれを親指で拭ってやると、サイラスはまた関心したように呟く。
「……なるほど。確かによく知っていたよ」
――指の先から、舌の先まで、キミは器用だ。
そう紡ぐサイラスの碧眼は、ほのかに熱を孕んでいた。
「もっと知りたい……と頼んだら、教えてくれるのかな?」
「……あんたが望むなら、いくらでも」
全く、こんな煽り文句がすぐ出てくるのだから恐ろしい。だが愛しい人の願いは聞き入れるべきだ。
再びサイラスの口を塞いで、その身をシーツの海に沈めた。